「ある日どこかで」
人知れず公開され、ビデオ化された後、数多くの映画を愛する人から圧倒的支持を得たタイム・スリップを素材とする幻想映画。大林監督は、「時をかける少女」の作曲に於ける参考として、音楽監督に本作を観てもらったという(ジョン・バリーの音楽は最高!)。「さびしんぼう」のオルゴールのアイディアもこの映画の影響が窺われる。又、映画「サンセット大通
り」を下敷きにしたTV作品「麗猫伝説」で、入江若葉さんが「待ってるわ…」という場面
は、本作冒頭部とそっくりである。
「アイコ16歳」
製作総指揮:大林宣彦、監督:今関あきよし。自主映画出身の今関が唯一成功した商業映画。やはり大林さんが、脚本に桂 千穂、内藤 誠といったプロを起用したことが大きかった。今関よ、監督の想いだけでは作品は成り立たない。もっとプロと一緒に仕事をしろ。本作で親子を演じた富田靖子と藤田弓子は後に“さびしんぼう”を演じることとなる。なお本作で宮崎ますみと松下由樹がデビューした。
「フィールド・オブ・ドリームス」(FOD)
映画の最後に主人公は、夢の中から現われた自分より年若い父親とキャッチボールを交わす。この場面
と良く似た光景が「異人たちとの夏」にも登場する。大林監督の名誉の為に云っておくが、映画が製作されたのはFODの方が後である。ただし、原作の山田太一氏がFODの原作「シューレス・ジョー」からヒントを得た可能性は充分にあると想う。いずれにせよ僕のこよなく愛する映画だ。ジェームス・アル・ジョーンズ(ダース・ベイダーの声も担当)最高!
「ニュー・シネマ・パラダイス」
映画館が燃える!この映画を最初に観たときに僕の脳裏をよぎったのは「おかしなふたり」であった。無論イタリアのトルナトーレ監督が観ていよう筈もない。遠く離れた国の映画監督の作家性にたまたま相通
じるものがあったということだろう。そして当然のことのように、この映画のパンフレットに大林監督が一文を寄せておられた。まるでその存在そのものが奇跡のような映画である。
「夢見るように眠りたい」
映画の最後に、協力:大林宣彦とクレジットが出る。当時全くの素人であった林 海象監督は、大林監督を訪ね、どうしても映画を撮りたいと相談し、助言を受けたということだ。この映画もどこか大林映画に似て、映画伝説に対する限りない敬意に満ちた美しい作品である。なお、本作で映画デビューした佐野史郎さんの後に大林映画にも登場することとなる。ちなみに佐野史郎さんはドラキュラが大好きでどうしても一度演じてみたいそうだ。ファンの勝手な妄想はどんどん広がる…。
「LOVE LETTER」
岩井俊二監督はどこか大林的作家性を持つ天才である。かといって決して亜流ではなく独自の美意識を確立している。余りにも強引な状況設定が、映画を観ているうちに全然気にならなくなるのだからこの監督の力量
はただごとではない。日本映画の将来が見えた!最近大林映画ファンの人達と話していると、必ず本作の話題が出てくる。ある女性は「この映画の監督が大林さんでなかったことがとても悔しかった。」とまで云っていた。個人的には酒井美紀ちゃんに是非大林映画にも登場してほしい。ちなみに映画で重要な役割を演じるM・プルースト作「失われた時を求めて」という小説は、フランス文学の最高傑作とも云われ、巨匠ルッキノ・ビスコンティー監督が生涯、映画化しようと夢見、果
たせなかった作品である(シナリオはすでに完成し、アラン・ドロン、ロミー・シュナイダー主演が予定されていた。う〜ん、やるね!)。
「怪奇大作戦〜京都買います」
テレビ映画史上傑作中の傑作。円谷プロ、実相寺昭雄監督。今は亡き岸田 森の渾身の演技が光る。岸田 森は云わずと知れた日本を代表するドラキュラ俳優である。大林監督の自主映画にも出演している。そして「金田一耕助の冒険」ではドラキュラのパロディで特別
出演を果たした。彼の余りにも早すぎた死が惜しまれる。本作は吸血鬼映画ではないが、岸田 森の役は、大林風に云うなら、さながら「恋にはぐれて物狂ほしくさまよう鬼」である。さあ、この作品を観ながら、ついに実現することの無かった岸田・大林コンビによるドラキュラ映画に思いを馳せようではないか!
「めまい」
ヒッチコックで最も好きな映画を挙げるなら、僕は迷うことなくこの映画にする。ヒッチの傑作群の中でもとりわけ浪漫的で、悲痛な映画である。そしてB・ハーマンの音楽の何と官能・耽美的なことか!それは死の誘惑に充ちている。だから大林監督が最新の著書(「4/9秒の言葉」創拓社刊)の中で、ヒッチの恋の想いと絡めて本作を取り上げておられるのを読んで、とても嬉しくなった。
その大林監督の著書と出会った日、T・ギリアムの「12モンキーズ」を観て驚いた。映画の終盤、主人公とその恋人が映画館で「めまい」を観る場面
が登場し、映画館を出た後二人は熱い抱擁を交わす。そこに高鳴るB・ハーマンの音楽!それも何とヒロインは髪をK・ノヴァクの如くブロンドに染めているではないか!なんだかとっても幸福な1日であった。
「白い肌に狂う鞭」
桂千穂さんは大林映画を語る上で欠かすことの出来ない脚本家である。桂さんが担当された作品は「ハウス」「麗猫伝説」「廃市」「ふたり」「あした」。そして第1稿まで完成するも、遂に映画化されなかった手塚治虫原作「ドン・ドラキュラ」もある。桂さんの著書「脚本家クロニクル」での大林監督の後書きによると、監督が桂千穂の名前を初めて眼にしたのはある雑誌の怪奇映画ベストテン
という特集号に於いてだそうだ。その特集で大林監督は1位「血とバラ」2位
「白い肌に狂う鞭」を選ばれ、桂さんは1位「白い肌に狂う鞭」2位「血とバラ」を選出した。その記事を見て監督は桂さんを「なんと凄い新鋭女流脚本家だろう。」と想われたそうだ。既にこの時から、このふたりの男達の出会いは運命付けられていたと云っても過言では無かろう。
「ハウス」で劇場映画にデビューされるとき、大林監督は当初「馬場毬男」というペンネームにしようと考えておられたという。無論「白い肌・・」の監督マリオ・バーバへのオマージュである。僕は長い間この伝説の映画をどうしても観たくて必死で探していた。「麗猫伝説」を観て以来、1つの仮説を心に抱いていたからだ。「麗猫伝説」では劇中唐突に、大泉滉さんが半裸の風吹ジュンさんを
延々と鞭で殴るシーンが登場する。大林映画では非常に例外的なエロティックな場面
で、よくこれがテレビ放映出来たなあ、と感心するくらいだ。このあまりの唐突さといい、大林、桂コンビ作という点から考えても絶対「白い肌・・」に似た場面
があるはずだ、そう僕は確信していた。そしてつい最近やっと、新しくできたレンタル店で「白い肌・・」のビデオに出会うことが出来た。息を潜めて観
た・・・やはり僕の確信は正しかった!! 「あした」の試写を観終わって桂さんは云った。「この音楽は`白い肌に狂う鞭`ですね。」大林監督は吃驚されたという。本当に「あした」のテーマと「白い肌・・」の曲はよく似ている。大林監督・・・いやいや、間違えた・・學草太郎少年は、「あした」の作曲時に、肌に染み込んでいた「白い肌・・」の旋律が、無意識のうちに沸き上がり、口ずさんでいたのだろう。